石炭火力発電所を見てきた話

1.あなたは、この黒い塊、何だか分かりますか?

かつて「黒いダイヤ」と呼ばれたのは…?

これは、かつて「黒いダイヤ」と呼ばれた石炭です。
私は、この日、石炭に初めて触りました。
写真左はその塊で、右が粉にした「微粉炭」です。


今回のお話は、この石炭を使った発電について、考えます。

2.石炭火力発電所を見てきました

先日、愛知県碧南市にある碧南火力発電所(碧南火力)を見学し、
同・武豊町にある武豊火力発電所(武豊火力)を外から見ました。
どちらも、石炭を燃やして発電をする発電所です。

海外から輸入した石炭をヤードに置き、
石炭を細かく砕いて微粉炭にしてからボイラー建屋で燃やして水蒸気を作り、
タービン建屋で、タービンを回して発電しています。

JERA「碧南火力発電所パンフレット

3.石炭の消費量

碧南火力の石炭ヤードは、高さ10~13メートル、
幅数十メートルの置き場が6列あり、
最大88万トン(!)もの石炭を貯蔵できるそうです。


しかし、発電機がフル稼働すると、それを1か月で使い切ってしまうそうです。
それでも、碧南火力の発電で賄われるのは、愛知県の電力消費の半分だそうです。

貯炭場全体像写真の一番左側に移っている石炭の山。
横から見ると、高さ13メートルで、スケールに圧倒されました。
JERA「碧南火力発電所パンフレット」より。
貯炭場の全体像です。

4.石炭火力は、天然ガス火力の2倍前後CO2を排出

石炭火力発電所は、CO2排出量が大きいため、
とくに効率が悪い亜臨界(Sub-C)、超臨界(SC)の発電機を、
操業停止(フェーズアウト)する計画が立てられつつあります。

では、どのくらいCO2排出量が大きいのでしょうか。
同じ1kWhの電気を作るために排出するCO2で比べると、下図のような違いがあります。

環境省「電気事業分野における地球温暖化対策の進捗状況の評価結果について」(参考資料集)

石炭火力では、天然ガス火力発電所に比べて2倍前後のCO2が排出されます。

  • 石炭火力(従来型):発電1kWh → CO2排出0.867kg
  • 石炭火力(超々臨界):発電1kWh → CO2排出0.795~0.836kg
  • LNG(天然ガス)火力(従来型):発電1kWh → CO2排出0.415kg

碧南火力・武豊火力を操業するのはJERAグループ。
このJERAの石炭火力発電量は、1年間で約560億kWhです
(2022年度。資源エネルギー庁「電力調査統計」より算出)。


蒸気条件が不明ですが、一番少なく見積もっても、
CO2排出量は1年間で約4,500万トンになります。
このCO2は、発電所の操業を続ける限り(標準的な稼働期間は40年)、排出され続けます。

その結果、残りの炭素予算(カーボン・バジェット※)の大半を使ってしまうことになります。
カーボン・バジェット:気温上昇を適切なレベル(産業革命前と比べ1.5~2.0℃)にとどめるために排出できるCO2等の量。

気候ネットワーク「石炭を巡る国際動向」より。

5.まとめ

「黒いダイヤ」、つまり、石炭は、産業革命以後、重要な燃料として使われてきました。
しかし、この蓄積がいまの気候危機につながってしまいました。
私たちが、現状を知り、
使う電気を減らす(省エネ)とともに、
再生可能エネルギーへと転換していくことが急務だと思います。